秋陽に誘われてトカゲ幼体の独歩 −秋の色青き尾で魅すトカゲの子−|「生命と微量元素」講座<荒川泰昭>

「生命と微量元素」講座

秋陽に誘われてトカゲ幼体の独歩

秋の色青き尾で魅すトカゲの子  2019年10月2日

■ ヒガシニホントカゲ(東日本蜥蜴)
ヒガシニホントカゲ(東日本蜥蜴)は、有鱗目トカゲ亜目トカゲ科トカゲ属で、学名はPlestiodon finitimusである。本州(東日本)、北海道、ロシア沿海地方に分布し、東西の境界は滋賀(若狭湾から琵琶湖)を経て和歌山に至る付近とされている。
これまで、「ニホントカゲ」は単一種とされてきたが、近年の形態的な研究や分子系統解析の研究により、すなわち外部形態やDNA解析による識別形質解析によって、平成24年(2012年)に本州西部や四国、九州など西日本に分布しているものと本州東部(東日本)、北海道、ロシア沿海地方に分布しているものは別種であることが判明した。西日本に分布しているものは従来どおり「ニホントカゲ」(日本蜥蜴 Plestiodon japonicus)とし、東日本北海道ロシア極東地方に分布しているものは「ヒガシニホントカゲ」(東日本蜥蜴 Plestiodon finitimus)と命名して分類され、現在は、それぞれ独立種として扱われている。また、本州の内、伊豆半島から伊豆諸島に分布するものは、その局在が確認され、異種として「オカダトカゲ」(岡田蜥蜴 Eumeces latiscutatus)と命名された。従って、本州には、3種類のトカゲがいることになる。

体長は20cm前後で、頭胴長(吻端から 総排出口後端まで)の約1.5倍にもなるをもつ。尾の長さを含めない頭胴長は、孵化幼体が約30mm、成体で約60〜80mmである。幼体は、黒地に薄茶色の縦縞が背面と側面に5本あり、背の中央線は頭頂部で二分岐している。青色(メタリックブルー)に輝き、とても目立つ。2〜3年で成体となるが、成体は胴体と尾が金色様の黄褐色で、暗褐色の縦縞がある。体表はなめらか。一対の前肢と後肢があり、指は5本で爪がある。体鱗列数は、26列(24〜28列)。ちなみに、オカダトカゲの体鱗列数は、28列(26〜30列)である。

生態は、ニホントカゲに似ており、平地から山地までの草地や森林などのほか、河川や海岸付近などに生息し、とくにの多い場所や、墓地や石垣など張り石で出来た場所を好む習性がある。また、日中に活動し、日当たりのよい場所を好むことも同じであるが、変温動物のため、日光浴で体温を上げ、呼吸を増やして体温を下げ、体温を調節しながら活動している。

昆虫類やクモ類、ミミズなどを捕食するが、タヌキやキツネ、ヘビなどの外敵に襲われた時は、他のトカゲの仲間と同様に「逃避時の尾の自切」が見られ、自切面から切り離し、後に再生する。とくに、幼体の尾青色(メタリックブルー)に輝き、とても目立つのは、ニホントカゲやオカダトカゲも同じであるが、『捕食者の目を切り離すことのできる尻尾に向けさせ、胴体を狙われないようにしている』と考えられている。事実、鳥などは4原色(赤・緑・青・透明(紫外線))を見分けることができるので、狙われる際には青い方へ目を向けさせるように適応してきたのかもしれない。

活動期は3月から10月頃。繁殖期は4月から5月頃で、雌は6月頃に倒木や石の下に穴を掘って10個程を産卵する。卵は10mm程の長楕円形。7月から8月頃に孵化する。雌雄共に2〜3年で性成熟する。11月頃に日当たりの良い斜面の地中や石垣などの巣穴で冬眠に入る。ヒガシニホントカゲは、現在のところ絶滅の恐れはないとされているが、寿命はニホントカゲと同じで、自然下では5〜6年程度である。

秋陽に誘われてトカゲ幼体の独歩

秋陽に誘われてトカゲ幼体の独歩

秋陽に誘われてトカゲ幼体の独歩

秋陽に誘われてトカゲ幼体の独歩

秋陽に誘われてトカゲ幼体の独歩

秋陽に誘われて青き尾のトカゲ幼体が独歩
2019.10.2 10.26〜撮影

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