大腸内視鏡検査(良性ポリープ切除)|「生命と微量元素」講座<荒川泰昭>

「生命と微量元素」講座

大腸内視鏡検査(良性ポリープ切除)

10年ぶりの大腸内視鏡検査(良性ポリープ切除) Colonoscopy-polyps-removal

<腺腫性ポリープの場合>
1.腺腫(adenoma)とは、腺組織の上皮細胞から発生する良性の腫瘍(腫瘍性増殖性病変)である。正常な腺上皮細胞に変異が生じて腫瘍化し、腺腫細胞が発生部位に限局してモノクローナルに増殖し、規則的な配列や増殖パターンを形成したもののことである。
2.癌腫との違いは、腫瘍化した細胞が組織破壊性に浸潤したり、他の臓器に転移したりしないことである。また、腺腫は細胞増殖のスピードが緩徐で、癌のように急激な増大や壊死を伴わないことなどが特徴である。
3.大腸の粘膜は絨毛で覆われているが、その細かな凹凸のくぼみの中にあり腸液を分泌する腺組織の表面にできたもの(粘膜に隆起する組織)が.腺腫性ポリープである。
4.腺腫性ポリープは、その形態によって、@ 腺腫性ポリープの大部分を占め、がん化の可能性が比較的少ない管状腺腫、A 最もがん化しやすい絨毛腺腫、B 管状腺腫と絨毛腺腫が混合した管状絨毛腺腫の3つに分類される。
5.ポリープは、腫瘍性のものと非腫瘍性のものとに大別され、非腫瘍性の中には、過誤腫性炎症性過形成性ポリープなどがあるが、最も腫瘍性があるのは腺腫であり、次が過形成性ポリープである。腺腫性ポリープは、大腸ポリープの中で最も多いポリープで、がん化のリスクが最も高い。
6.腺腫性ポリープは、大腸の中でも特に体の右側(盲腸、上行結腸)に好発し、がん化の危険性が高いため、通常は切除する必要があるとされている。
7.小さなポリープではほとんど症状はないが、大きくなってくると、良性であっても便潜血鮮血便の症状が出る。発生部位にもよるが、若年性ポリープではしばしば自然脱落して下血し、大きなポリープでは回盲部に多発する腸重積肛門側への嵌入などがみられることがある。
8.ポリープのサイズが大きくなるとがん化の確率が高くなり、一般的には10年以上の経過でがん化すると考えられているが、サイズが 5mmのポリープでもがん化が認められる場合があるという。したがって、被験者の希望にもよるが、原則として発見した腺腫性ポリープは、全ての部位で、サイズに関わらず全て治療(切除)の対象とされている。
9.しかし、ポリープ多発で、全ポリープ切除が物理的に困難な場合は、被験者の大腸癌リスクを総合的に考慮し「ある程度リスクの高いポリープを切除する」というのが専門家の一致した意見である。
<過形成ポリープ(鋸歯状病変)の場合>
1.従来、大腸の過形成ポリープ(旧称)(hyperplastic polyp;HP)は、鋸歯状構造を示す非腫瘍性の病変で、数ミリ大で身体の左側(直腸)に好発するが、癌化の危険性はなく、良性として、通常は切除する必要はないとされてきた。
2.ところが、鋸歯状構造を示すが、腫瘍性異型の病変である鋸歯状腺腫 serrated adenoma(SA)の存在や、HPにはない不整な構造や不規則な核腫大をもち、HP やSA とは明らかに異なる腫瘍性(これには異論もある)の鋸歯状ポリープ sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)の存在が明らかとなってきた。
3.したがって最近では、従来の過形成ポリープ(旧称)は、鋸歯状病変と呼ばれ、@ 非腫瘍性の HP、A 腫瘍性の TSA (SA とSSA/P を区別するために traditional SAという)、B 腫瘍性の SSA/P に分類されている。
4.鋸歯状腺腫 SA は左側大腸(直腸・S字結腸)に好発し、癌化の危険性は管状腺腫と同等程度と考えられている。
5.鋸歯状ポリープ SSA/P は右側大腸(盲腸、上行結腸)に好発し、右側の大腸癌の前駆病変として注目されている。
6.内視鏡検査を行うと、まずほとんどの被験者に複数の鋸歯状ポリープ serrated polyp (SP)が見つかるという。
7.SPのサイズが10ミリを超えると、発癌リスクは腺腫と同じ程度になると考えられている。
8.従来、体の右側(盲腸、上行結腸)にできたSPは、左側(直腸・S字結腸)のSPよりハイリスクである、すなわち極端に言えば、右側大腸(盲腸側)にある場合は危険、左側(直腸側)にあれば無害というのが通説であり、直腸(S字結腸)以外の全ての部位で、鋸歯状病変があれば、サイズに関わらず全ての鋸歯状病変を治療すべきであるとされている。
9.直腸(S字結腸)の「微小過形成ポリープ(旧称)」については、現時点では「危険性が低い」とされ(しかし、直腸癌との関係を疑っている専門家もいるが)、5ミリ以上の病変のみが治療対象であるとされている。
10.しかし、最近「見落とし大腸癌の30%が過形成ポリープ(旧称)由来」であるという報告もある。
11.過形成ポリープ(旧称)の多発は「腫瘍のできやすい体質」や「腫瘍のできやすい食生活」に対する警告であり、定期的な検診が望ましい。

盲腸ポリープ

盲腸ポリープ 色素散布後

盲腸ポリープ 切除後

#1 盲腸ポリープ
 4mm大Ts 
  
#1 盲腸ポリープ 
腺腫(良性) 色素散布後 
          
#1 盲腸ポリープ 
切除後

上行結腸ポリープ

上行結腸ポリープ  色素散布 

上行結腸ポリープ  切除後

#2 上行結腸ポリープ
5mm大Ts 
      
#2 上行結腸ポリープ 
腺腫(良性) 色素散布後
#2 上行結腸ポリープ 
切除後

上行結腸ポリープ

上行結腸ポリープ  色素散布後

上行結腸ポリープ 切除後

#3 上行結腸ポリープ
 3mm大Ts  
  
#3 上行結腸ポリープ
 腺腫(良性) 色素散布後
#3 上行結腸ポリープ
 切除後

S状結腸ポリープ

S状結腸ポリープ  色素散布後 

S状結腸ポリープ  切除後

#4 S状結腸ポリープ 
4mm大Ua
#4 S状結腸ポリープ 
過形成(良性) 色素散布後
#4 S状結腸ポリープ 
切除後

S状結腸ポリープ

S状結腸ポリープ  色素散布後 

S状結腸ポリープ  切除後

#5 S状結腸ポリープ  
5mm大Ts 
   
#5 S状結腸ポリープ 
過形成(良性) 色素散布後 
#5 S状結腸ポリープ 
切除後

箱根湯本温泉にて静養

大腸内視鏡検査(ポリープ切除)

箱根湯本温泉にて静養

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