九州鉄道記念館(旧九州鉄道本社屋)(国の登録有形文化財)|「生命と微量元素」講座<荒川泰昭>

「生命と微量元素」講座

レトロ門司」復興への道

九州鉄道記念館(旧九州鉄道本社)(国の登録有形文化財)

九州鉄道記念館(旧九州鉄道本社屋)(国の登録有形文化財)

■ 歴史
九州鉄道記念館は、明治24年(1891年)に、門司駅(現在の門司港駅)の開業にあわせて、九州初の鉄道会社として設立された九州鉄道会社の本社屋として建設された建物である。現在のJR門司港駅(国の重要文化財)から南へ200mほど離れた小高い丘(北九州市門司区清滝二丁目3番29号)に立地する。建物は、一部鉄骨作りの2階建、東西の長さ62.5m、南北12mの大規模な煉瓦造建築であり、屋根は切妻屋根で、中央に切妻破風の玄関が南北両面に設けられている。フランス積欠円アーチ窓を連続させ、西洋の古典建築風に妻面にペディメント(日本建築の「破風」に該当)を飾り、中段のコーニス(胴蛇腹:壁上部の水平な出っ張り)には吸水性が少なく摩滅に強い焼過煉瓦を矢筈に積み、凝った設えとなっている。敷地面積約7,800平方メートル。

明治21年(1888年)に建設された九州鉄道本社社屋は、後述のように、時代の変遷と共に、その所有者が、明治40年(1907年)には国有化により国鉄となり、昭和62年(1987年)には民営化により九州旅客鉄道(JR九州)へと変わるが、平成15年(2003年)、社屋を大規模改修して、九州鉄道記念館(鉄道の博物館)として生まれ変わる。館の土地、建物、展示物は、JR九州の所有物であるが、北九州市の指定管理者「九州鉄道記念館運営共同企業体」(構成企業:JR九州メンテナンス、JTB九州、JR九州エージェンシー)の運営となる。平成19年(2007年)11月30日には、本館(旧九州鉄道本社)が近代化産業遺産(北九州炭鉱 - 筑豊炭田からの石炭輸送・貿易関連遺産)に認定され、また平成26年(2014年)には、国の登録有形文化財に登録された。

九州鉄道会社は、九州で初めての鉄道会社として明治21年(1888年)に設立された。現在の九州鉄道記念館は、その本社屋として明治24年(1891年)に建設された建物である。
九州鉄道会社は、当初は仮本社を博多に置いていたが、明治24年(1891年)に門司駅(現在の門司港駅)の開業にあわせて、駅の南側に本社を移転した。すなわち、明治22年(1889年)、門司港が石炭、米、麦、麦粉、硫黄を扱う国の特別輸出港に指定されたことを契機に、明治24年(1891年)に本社を現在の場所に移転した。時代は折しも石炭ブームであり、港と鉄道ができたことで、それまで若松と芦屋に集められていた筑豊の石炭が、折尾を経由して直接門司駅に輸送され、門司港から輸出されるようになった。九州鉄道は、石炭産出地の筑豊と積出港である門司港をつなぐ輸送手段として大きな役割を果たすことになる。

明治24年(1891年)以降、九州内に複数の私鉄鉄道が開業・乱立するが、明治30年(1897年)に筑豊鉄道、明治31年(1898年)に伊万里鉄道、明治34年(1901年)に豊州鉄道、明治35年(1902年)に唐津鉄道と、最終的には、九州鉄道が他社を吸収・合併し、傘下に収めている。しかし、九州鉄道は、明治39年(1906年)の帝国議会における鉄道国有法の成立によって、大きく変遷する。翌・明治40年(1907年)に九州鉄道は国有化され、さらに、その後の民営化によって、昭和62年(1987年)には国鉄清算事業団九州支社となる。

九州鉄道記念館(旧九州鉄道本社)(国の登録有形文化財)

九州鉄道記念館(旧九州鉄道本社)(国の登録有形文化財)

九州鉄道記念館(旧九州鉄道本社)(国の登録有形文化財)

九州鉄道記念館(旧九州鉄道本社)(国の登録有形文化財)

九州鉄道記念館(旧九州鉄道本社屋)(国の登録有形文化財)
■ 復元・保存への道
上述の如く、明治21年(1888年)に設立された九州鉄道は、明治39年(1906年)の鉄道国有法によって、明治40年(1907年)に国有化され、さらに、その後の民営化によって、昭和62年(1987年)には国鉄清算事業団九州支社となる。したがって、九州鉄道の本社だった建物は、国有化によって国鉄が所有し、民営化によって九州旅客鉄道(JR九州)が所有することになる。そして、平成15年(2003年)年8月9日に九州鉄道記念館として開館する。館の土地、建物、展示物は、JR九州の所有物であるが、北九州市の指定管理者「九州鉄道記念館運営共同企業体」(構成企業:JR九州メンテナンス、JTB九州、JR九州エージェンシー)が管理運営することになる。

こうして、明治21年(1888年)に建設された九州鉄道本社社屋は、時代の変遷を経て、平成15年(2003年)、社屋を大規模改修して、九州鉄道記念館(鉄道の博物館)として生まれ変わる。開館への設備工事に当って、屋根は金属板葺、内部は鉄骨造にする等の大規模な改修工事が行われたが、煉瓦積みの壁は、明治時代の煉瓦構造物の技術を伝える貴重な建造物であるとして、明治中期に建設された当時のままで保存された。

すなわち、煉瓦の長手と小口を交互に並べる「フランス積み(フランドル積み)」が採用されている煉瓦壁は、建設当時のまま残された。(この工法は、美観には優れているが、技術的には手間を要し、九州管内では例数も希少だという)。また、フランス積の外壁にある連続の欠円アーチ窓や、西洋の古典建築風にデザインされた妻面のペディメント、吸水性が少なく摩滅に強い焼過煉瓦で造られた1階と2階の中間にある装飾的なコーニス(胴蛇腹:壁上部の水平帯や開口部上部)、矢筈積みの凝った設えなども、そのまま保存された。ちなみに、内部の装飾は残っていないという。
▼ 館内施設
施設は、九州鉄道発祥の地に整備された日本の鉄道の博物館(鉄道のテーマパーク)として、本館、車両展示場、ミニ鉄道公園の3つのエリアから構成されている。本館は、明治24年(1891年)に建築された赤レンガ造りの初代九州鉄道本社社屋(のち鉄道院、鉄道省、国鉄が使用)を保存活用しており、館内には鉄道模型やヘッドマークの展示、歴代の駅員の制服や鉄道用具などの展示物、門司港 - 折尾間の運転体験ができる運転シミュレーター、キッズルームなどがある。また、おみやげ店もあり、鉄道関連グッズが豊富にそろっている。駅のホームを思わせる車両展示場には、九州で活躍した歴代の9つの車両が保存され、間近で車両の造形美に触れることができる。全国初であるミニ鉄道公園では、屋外に設けられた450mmゲージのレール上を走る模型鉄道車両(787系・813系・883系・885系・キハ72系)に乗車し、運転することができる。ただし実際は自動運転である。
<資料:中学同窓・稲佐重正君提供>
<写真:中学同窓・田中文君撮影>
参考資料:1.ルネッサンスの知恵 第3号 門司港レトロヘの道すじ 財団法人北九州都市協会(平成14年2月)、2.北九州市新・新申期計画 北九州市(昭和55年4月)、3.ポート門司 21 北九州市職員研修所(昭和57年)ほか

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